筆者は障害のある方の就職支援を行う就労移行支援事業所で4年間勤務していました。
就労移行支援事業所に通所している方は様々な障害をお持ちでしたが、その中でも、発達障害は利用者の大半を占めており、ASD(自閉症スペクトラム障)の方もたくさん多くいらっしゃいました。
同じASD(自閉症スペクトラム障)と言っても、特性の現れ方には強弱があり、得意不得意も千差万別です。一人ひとり違うのは当たり前ですので、もちろん就職先の職種も様々でした。
今回は、私が就職を支援したASD(自閉症スペクトラム障)の方々が実際にどんな仕事内容で就職したのか、また、長期就労できている成功のコツを実例をもとにご紹介します。
ASD(自閉症スペクトラム障)の方の特性は、以前書いたこちらの記事をご覧ください。
自閉症スペクトラム障の一般的な特性
自閉症スペクトラム障の一般的に、以下のような特性があります。
- 社会性の特性
暗黙のルールが理解できない。人とのかかわり方が独特。建前や冗談が理解できず、文字通り受け取ってしまう。 - コミュニケーションの特性
言葉や表情等の使い方や理解の仕方が独特で、人と上手にコミュニケーションを取れない。曖昧な表現を理解したり、相手の感情を察することが苦手。他人と目を合わせられなかったり、逆に目を合わせすぎることがある。 - 想像力の特性
見通しが立てにくく、経験したことがないことに対して想像を膨らませられない。急な変更が苦手。 - 感覚の特性
感覚の敏感さや鈍さ。気になったことがあるとそればっかりに気を取られてしまう、など。
自閉症スペクトラム障の仕事での困りごと
自閉症スペクトラム障の特性ゆえ、以下のような仕事での困りごとがあります。以下は一例です。
- 知らず知らずに場にそぐわない発言や行動をしてしまい、周囲とのコミュニケーションがうまくとれず、周りから浮いてしまう。
- 明確に指示を出してもらわないと相手が意図している物事をくみ取れず、指示内容と全く異なるものを提出してしまったりする。
- 決められた手順や道順など法則性を好んだり、自分だけのルールにこだわりが強いため、会社のルールに従うことが苦痛、できない。
- 興味関心への偏りが大きく、興味のないことは全くやる気が起きない。
- 夜になっても、やりたいことや、気になったことがあると寝たくない。そのため日中に眠気が出てしまうことがある。
- ASDの方は急な予定変更があると、パニックになったり、イライラしたり、焦ってしまい、仕事でミスをしたり、どれから手を付けていいかわからず混乱してしまう。
- 一度言われたことをすっかり忘れて、同じことを繰り返してしまう。
- PCの画面がまぶしすぎると感じたり、周りの音が気になって集中できない。
このような特性がありながらも、ASD(自閉症スペクトラム障)を持つ多くの方が働いています。
私が就職を支援したASD(自閉症スペクトラム障)の方も多様な特性を持ちながら就職し、現在も働き続けている方がたくさんいらっしゃいます。
皆さんどのような仕事に就いたのか、また、なぜ障害のある方の職場定着率が低い中、1年以上も働き続けられているのか、成功のコツをご紹介します。
【事例】職種と仕事内容
- 毎日やることがほぼ同じで変化が少ない
- 長時間同じことを繰り返すことが得意
- 指先が器用
- 静かな環境の方が働きやすい
- 本が大好き
- 仕事には明確なルールがある
- 長時間同じことを繰り返すことが苦ではない
- 基本的に一人作業で人との関りが少ない
- ミスを見つけることが得意
- 掃除をする、という明確な仕事内容
- マニュアルが整備されている
- 最低限の人としか関わらない
- 朝が早い仕事
- 毎日やることがほぼ決まっている
- 黙々と同じ仕事を繰り返すことが得意
- 最低限の人としか関わらない
- ルーチンワークよりも色々なことをやっていたほうが集中力を保てる
- 最低限の人としか関わらない
- 得意なPCを使った業務
- 接客が好き
- ルーティンワークで変化が少ない
- すべての業務にマニュアルがある
- 体を動かしているほうが眠くならない
- タイムスケジュールが決まっている
就職成功のコツ
実際に就職された仕事内容やこの仕事を選んだ理由を見て、どう思いましたか?
長期就労できている成功のコツは、「自分の特性に合った仕事を選んでいる」ことです。
同じASDでもルーティンワークが得意な方もいれば、やることが日々違うほうが集中力を保てる方もいらっしゃいますし、PCを使うような事務作業では眠くなってしまう方は、体を動かすような仕事の方が向いている場合もあります。
自分の特性、特に自分の強みや弱みを理解し、得意を生かして働ける仕事を選ぶこが長期就労に繋がっているのです。
自分の強みが分からない…
でも「自分の強みが分からない・・・」と思っている方も多いのではないでしょうか。
実際に今回事例として挙げた方々も、就労移行支援事業所に来たときは、自分の強みが分からないと皆さん言っていました。しかし、就労移行支援事業所に通い、様々な訓練を通して自分の強みを発見し、自己理解を深め、その強みを生かして就職されていきました。
私が就労移行支援事業所で働いていた時に感じたことは、「どんな人でも強みはある」ということです。
自分の強みは自分が一番理解していないことも多いです。就労移行支援事業所のスタッフはあなたの強みをきっと見つけてくれます。
就職活動がうまくいかない方、これから就活しようとしているかた、就活の進め方が分からない方、、、どんな方でも就労移行支援事業所は受け入れてくれるはずです。
ぜひ一度ご相談してみてください。